ブロックチェーン、AIで先を行くエストニアで見つけた つまらなくない未来

男性 40代 製造業

 ご著者は週刊ダイアモンドで「孫家の教え」の連載担当の小島健志氏、監修に孫泰蔵氏(ソフトバンクグループ会長 孫正義氏の実弟)がついています。

 本書は変化の早いこの時代に危機感を感じながらも、ワクワクして新しい情報を取り込み、自らも新しいことにチャレンジしてみたいと考える人たちに、多くのヒントを与えてくれます。

エストニア電子政府って何?

 まず、多くの日本人にとって、エストニアとはほとんど馴染みがないのではないでしょうか。今、エストニアはIT立国を掲げて電子政府を実現したことで、世界中から注目を集めています。e-estoniaと呼ばれるその仕組みは、国民にID番号を付与し個人情報を管理し、行政サービスをすべてデジタル化してオンラインで受けられるようにする、というコンセプトです。これにより、結婚・離婚・土地の売却以外は24時間パソコン・スマートフォンで申請が可能となっています

 この仕組みの裏には、複数のデータベースを繋ぐエックスロード技術やデータのセキュリティを担保するためのブロックチェーン技術などの最新技術が使われています。それに加えて、万が一不正行為を働いた時の罰則を制定した法整備も行い、信頼できる仕組みとして実運用されています。

 そして、この政府が提供するデジタルデータ活用のインフラの上に、民間企業がアプリを構築するプラットフォームエコシステムも生まれています。さらに、電子上でエストニア国民になれるe-residencyは、世界各国から高い技術や志を持った人材をエストニアに呼び込んでいます。

エストニア電子政府実現から得られる学びとは?

 なぜ、旧ソ連から1991年に独立した人口130万人の若い小国がこのような先進的な仕組みを実現できたのでしょうか。そこにこの本の最大の学びがあると思います。

 エストニアは歴史的に、ロシア、ナチスに侵略されてきました。そんなエストニアが国家とは何かを考え抜いた答えが、国土ではなく国民でした。有事の際に国民が離散してもデジタル上でエストニア国民として保証される仕組みを実現したい。強い危機感を背景に、大きな理想を掲げ、電子政府が実現しました。

 私たちのビジネスの世界にも通じるものだと思います。置かれている状況を把握し、何を守りたいか、それを理想として掲げた時には、プロジェクトを牽引する強力な力となるのでしょう。

まとめ

 本書の序盤ではそのようなエストニアの成功ストーリーが関係者へのインタビューを交えて紹介されています。そしてエストニアの歴史と今について理解を深めた後には、政府・産業・教育のカテゴリーで電子化による成功事例を紹介されており、「自分なら何ができるだろう」「何をすべき」「こんなことをやってみたい」といったイマジネーションをかき立ててくれます。

 本書を読み終えるころにはきっと何かを始めたくてうずうずしていることでしょう。